5年間使用していた「NuForce Icon」というアンプがとうとうお亡くなりになられたので、修理せずに新しいアンプを買うことにした。

私は多少オーディオをかじったことがあるだけの素人で、音楽再生は主にPCでやるので、PCオーディオに適したものがないか探していたところ、最近以下の商品が発売されたというニュース記事を見かけた。

SP192AB 5W+5W超小型AB級プリメインアンプ of PURE SPEED/ピュアスピード(ハイレゾPCオーディオ)

SAYAというメーカーのプリメインアンプらしい。SP192ABが型番であるのは分かるが、「PURE SPEED」ってのはブランド名か?まぁその辺は割とどうでもいいのだが、このアンプ、ニュースを引用したブログとかは多いが、肝心の試聴レビューがほとんどない。Twitterとかあされば出てくるかもしれないが、少なくとも、Googleを使って検索したところによると、レビューはヒットせず・・・。

なので、とりあえず、参考になるかどうかは分からないが、私の貧弱な耳でSP192ABを聴いた感想を書いてみることにする。

1. 機器構成

はじめに、私のオーディオのハードウェアについて書いておく。

まず、音楽再生は先に書いた通りPCである。SYCOMというBTO屋さんで組み立ててもらったミドルタワーのデスクトップ。OSはWindows7で、再生ソフトはFoobar2000。ASIOとかWASAPIとかは使っておらず、ダイレクトサウンドである。本当はASIOとかWASAPIで再生するといいらしいのだが、スクリーンリーダーがおかしくなるので使っていない。

次に、ヘッドフォンアンプの「Black Cube Linear USB」(以下、BCLと略記)を、PCとUSB接続している。これ、本当はヘッドフォンアンプだけれども、スピーカーと繋ぐときはDAC兼プリアンプとして使っている。BCLとPC間のUSBケーブルには、メーカーは忘れてしまったが\7,000ぐらいのノイズフィルタ付きの高音質ケーブルというのを使っている。そして、BCLの電源ケーブルは、PS Audioの「XPD1.8」というやつ。あの、蛇みたいにぶっとい電源ケーブルである。

で、BCLと今回買ったSP192ABをRCA接続しているわけだ。RCAケーブルには、SAECの、0.5mで\5,000ぐらいするやつを使っている。ちなみに、前の「Icon」のAC電源には、無駄にオヤイデの電源ケーブルを使っていたが、SP192ABはただのACアダプタで、しかもアダプタの先はただのメガネケーブルなので、どうしようもなさそうだ。

そして、SP192ABの先には、スピーカーが繋がっている。機種はB&Wの705だ。スピーカーケーブルには、Kimberの、1.5mで\20,000ぐらいするやつを使っている。ケーブル類は、ほとんど型番を忘れてしまった。余談だが、このB&W 705も、5年ぐらい前に買ったものである。中古だったけど。

ハードウェアとしてはこんなところだろうか。

2. SP192ABの形状

もしも全盲の人が読んでいたときのために、スイッチや端子類のことを書いておこう。

まず全面には次の順で並んでいる。左から 1.電源スイッチ、 2.RCA / Stereo Miniの入力切り替えスイッチ、 3.ボリュームつまみ、 4.Stereo Mini入力端子 である。

電源スイッチは、下がオフで上がオンである。入力切り替えスイッチは、上がStereo Miniで下がRCAである。ボリュームつまみは、まぁいいでしょう。

側面には何もスイッチ・端子はない。

背面には、RCA入力端子、スピーカー端子、AC電源端子がある。これだけだ。RCAやスピーカー端子のLRがどっちかは、私に聞かないで欲しい。配列は、背面を正面に見て、左上にRCA、左下と右下にスピーカー端子、右上にAC電源端子がある。ちなみにスピーカー端子は、普通のスピーカーケーブル(銅線)と、バナナプラグの両方が使える。

3. 音質

さて、肝心の音質である。試聴に使うのは前述したハード構成であるから、スピーカーにはB&W 705を使用する。なお、私はIconでしか705の音を聴いたことがないので、スピーカーの特性なのか、Iconの特性だったのか判然としない点が多々あるけれども、そこらへんは適当に他のレビューで補って頂きたい。

あと、もう一つ注意点として、Iconが壊れてから約1カ月、繋ぎのスピーカーとしてBoseの「SoundLink」を使っていた。はっきりいってB&WとBoseじゃ音の傾向が違いすぎて、Boseに慣れてしまったこの耳でまともなレビューができるかどうかわからない。というわけで、いろいろバイアスが掛かっていることを承知の上でお読み頂きたい。

試聴は、SP192ABを2時間ほどエージングさせた後に実施した。

試聴に使った曲は以下の三つで、いずれもCDからExact Audio Copyというソフトを使ってAccurateRipしたファイルを、ロスレス変換(MonkeyAudio)したものである。

  • [クラシック] ベートーヴェン「オーボエ協奏曲」 (イ・ムジチ合奏団)
  • [ジャズ] 小曽根真「WIZARD of OZONE」より 「The New Beginning」
  • [ヘヴィーメタル] Impelliteri「クランチ・スクリーミング・シンフォニー」より 「Rat Race」
★ 全体的な印象

高域にはつやがあり、中域は強め。低域はパワーは無いが品のあるタイトな音である。でも、この特徴は、SP92ABのものなのか、705のものなのかよく分からない。ただ、高域のつやに関しては、Iconを使っていたころにはなかった特徴なので、SP192ABのものかもしれない。

解像度は今市だが、分解能は良好である。何十万円もするアンプとは比べるまでもないけれど、価格帯を考えれば十分高い品質と言える。

ただ、逆に各パートの音がはっきり聴こえる分、まとまりがなくバラバラに聴こえるのがデメリットとも言える。リファレンス的に聴きたい人にとっては良いが、音楽を楽しめるかというと、ちょっと微妙・・・。細かいところに気がいってしまって、音楽全体を楽しむことができない人もいそうである。

楽器としては、やはり生楽器の音は良い。特に弦楽器の音はすてきである。スピーカーの性質もあるだろうが、打ち込みはちょっと厳しいかも、といったところ。というか、全般的に「やっぱり705に5Wはパワー不足か?」と若干思ったりする。

★個々の曲についての印象

では、一つずつ聴いた印象を書いてみようと思う。

まず、ヴィヴァルディの「オーボエ協奏曲」(イ・ムジチ合奏団)である。先ほども書いたように解像度は高くないので定位ははっきりしないが、分解能は高いので各パートの音はしっかり聴くことができる。ホールの響きもまずまず再現できている感じだ。ヴァイオリンの音はなんか今市だけど、オーボエは伸びのあるつややかな音で心地よい。クラシックはあまり聴かないので、ちょっと、これぐらいしか私には評価することができない。

次に、小曽根真の「WIZARD of OZONE」より「The New Beginning」である。一番強い印象は「ドラムの音の切れが良い」であった。乾いたクールなスネアの音はなかなか良い。シンバルが少し耳に付く感じではあるが、ピアノの音も悪くない。また、各パートの音がはっきり聴こえるので、ジャズ独特の「駆け引き」みたいなのも、楽しめる気はする。そりゃ、このぐらいの価格帯で微妙なニュアンスまでは分からないけども。ただ、ウッドベースのビビリ音が若干気になる。

最後に、Impelliteriの「クランチ・スクリーミング・シンフォニー」より「Rat Race」。録音がそうなんだと思うが、ボーカルはやや浮きぎみだけど、はっきり聴こえる。おそらくだが、他の音源と比較してみて、女性ボーカルの方が伸びのある声を出してくれそうな気はする。それで、次にディストーション・ギターであるが、中域が強いためなんか安っぽいアンプに繋いだような音になってしまうが、ジャリジャリした歪みが好きなら悪くはないかもしれない。なんというか、ピックアップがシングルかハムか、割と明瞭に区別できる感じだ。ベースはもともと音源自体があまり強くないので、そこそこといった感じ。だいたい、705がそんなに低音をバンバン出すタイプではないので、まぁ、そういうものかな。ドラムの傾向はジャズドラムと似たような感じである。

4.まとめ

価格帯もそれなりでサイズも小さいので、小型スピーカーを使っている人には、SP192ABはお勧め。

ただ、もう少し大きくてもいいから、端子の配置にちょっと余裕が欲しかったかなというところである。背面側が。