どういうわけか、表題のようなものが最近アマゾンとかで売られているようで・・・。業者が災害用に民間へ下ろしているのか知らないが、それ以上は考えないことにして・・・。

戦闘糧食(レーション)というと、戦争とかのときに食べるものと思う人がいるかもしれないが、これは災害時の食料として活用できる。もちろん、本来は軍などが作戦行動中に使用するものなんだけど、防災グッズの中に入れておけば、有事の時にも、せめて食事だけはなんとかなる。

ちなみに防災グッズの食料と言えば、乾パンとかアルファ米とかを思い浮かべる人が多いだろう。っていうか、俺もそういうイメージ。こういった食品は、生きるために最低限必要ではあるが、地震などで精神的に参っているときには当然、平時でも、毎日だとあきてしまうだろう。

戦闘も似たようなもので、実際、戦争というのは待機時間が多いようだ。そういうときの唯一の楽しみは、食事でアル。食事がうまいかどうかは、兵士にとっても重要なことだし、防災上も、避難所で慣れない暮らしをする人々にとって、食事ぐらいは温かいものが食べたいことだろう。

そういうわけで、前置きが長くなったけれど。今回は自衛隊の「戦闘糧食II型」というものを試食してみる。ただ、グルメレポというよりは、「いざというときに、どうやって使ったら良いか迷わないように、あらかじめ余裕があるときに手順を確認しておこう」というのが趣旨でアル。

今回手に入れた「戦闘糧食II型」は、以下のような内容物となっている。

  • おかず...ウインナーカレー250g×1、すき焼きハンバーグ200g×1、中華風カルビ180g×1
  • 主食 ...ご飯...3年保存ご飯170g×3
  • 食器 ...お召し上がり用皿+フォークスプーン×各3
  • その他 ...加熱剤60g+加熱用袋×各3

ちなみに本当は「戦闘糧食II型 あつあつ防災ミリメシセット(1人3食分)1個【3年保存】」というのが正式な名前らしい。どうも、民間用に作ったものなのかも。

それから、本来、箱に納入日が書いてあって、だいたいそこから1年ぐらいが保存期間らしいのだけれど、あいにく全盲の私には確認できなかった。なので、保存期間内かどうかは、よく分からないことだけお断りしておく。

さて、届いた箱を開けてみると、そんなに広くないスペースにぎっしりと効率的に物が詰め込まれている。カレーのレトルトパックみたいなやつがおかずだろう、それが三つ。ご飯は3食分がビニールでひとまとまりになっているが、「サトウのごはん」を知っていればすぐに分かる。あと、ジップロックのような袋、使い捨てカイロのようなものがそれぞれ三つと、フォークスプーンが三つ。ようもまあ、よく詰め込んだな・・・という感じでアル。 ただ、内容物に「皿」と書いてあったんだけど、どうやら皿は入ってない模様。ご飯を食べ終わったところに、おかずを入れるか、ご飯の上からかけて、どんぶり風にして食べるか、といった感じだろうか。

とりあえず、レトルトばかりだと視覚障害者には、どれが何だか分からないのだが、ハンバーグらしきおかずを食べてみることにする。あとは、ご飯一パック。食器がないので、ご飯の上からかけて食べよう。

さて、ここまで書くのを忘れていたが・・・。「戦闘糧食II型」は暖かい食事が取れるタイプの糧食である。なので、そのままでは食べられず、加熱しなければならない。さあ、どうしたもんか。

同封されていた紙をスキャンしてみると、全文は厳密にOCRできなかったものの、おおよその加熱方法は分かった。

以下の手順は厳守した方がいいだろう。後でも触れるが、とにかく火傷の危険性があるからだ。

  1. まず、おかずとご飯を出しておく。後から用意すると手遅れになるので。
  2. 加熱袋(ジップロックのようなやつ)を開けて、底面のへこみをいじって、袋が上向きに立つようにする。ちなみに、普通のジップロックはただの袋だけど、加熱袋は、底面が折り返されていて、レトルトカレーにもよくあるように、口を上にして真っ直ぐ立てられるようになっている。
  3. 150mlほどの水を用意しておく。ここで用意しておかないと手遅れになるので。計量カップがあるといいだろう。
  4. 手をなるべく綺麗に拭いて水分を飛ばす。
  5. 加熱剤(使い捨てカイロみたいなやつ)を開封し、加熱袋の中に、横にして寝かせるように置く。この作業はできるだけ迅速に行った方がいい。
  6. 3.で用意した水を加熱袋に入れ、おかずとご飯も加熱袋に入れる。そして、袋の口を閉じる。この作業は迅速に行う。ちなみに、おかずとかご飯は寝かせて入れなくてもよく、自然な形で入れればOK 。
  7. それから20分、加熱袋には触れずに待つ。20分経ったら加熱袋からおかずとご飯を出し、食べる。このとき、袋がとても熱いので注意すること。

だいたい、食べるまでの手順はこんな感じだ。

特に注意が必要なのは、加熱剤に水を加えると、化学反応が一気に起きて、瞬間的に加熱袋の温度も上がるということだ。そのときに水蒸気も一気に噴出する

説明書には「加熱中は袋を倒したり触れたりしないでください」と書いてあったが、こっそり触ってみると、マジ熱かった。瞬間的にやけどを負うような温度ではないものの、数分触っていたら低温やけどぐらいはするかもしれない。加熱剤を開けてから水を加え、食品を入れ、加熱袋を閉じるまでの作業は、できるだけ手際よくやった方がいいだろう。あと、周りにだれかいたら、注意を促すことも忘れないように。

ちなみにだが、加熱袋の口部分には水蒸気を放出する穴が空いている。なので、倒してもだめなのだと思われる。だから、全盲は特に要注意。

「そこまでして非常時に暖かい飯が食いたいのか?」という意見もあろうが、いやいや、前述のとおり、そういうときは食事ぐらいしか楽しみがないのだ。1日のほとんどを不安な気持ちで過ごさなければならない非常時に、飯を食うときぐらい不安を閉め出す意味でも、こうした手順をこなすことは悪いことではないと思う。

さて。一応「味」についても触れておこうかな。

とりあえず、ご飯におかずをかけて食べるのは問題なさそうだ。きちんとやれば、こぼれたりしない。だいたい、カレーだっておかずに含まれてるわけだし・・・。

味は、まあ、「まずいレトルト食品」といった感じ。でも、「まずい」というのは少し言い過ぎて「おいしくはないレトルト食品」というのが正しいかもしれない。でも、まだハンバーグしか食ってないけど、普通に常食として食べても、食べられるとは思う。ガスとに言った方が安上がりだとは思うが。とはいえ、避難所で乾パンを食べることを想像すると、これは大ご馳走だ。

それから、ご飯についてだが、20分ほどの加熱では、柔らかいところと堅いところに、むらがあった。おかずも、もうちょっと暖かくてもいいかな・・・という感じ。でも、おかずをご飯にかけることで、おかずの水分(タレとか)がうまく絡み合って、ご飯の軟らかさはバランス良くなった。少々柔らかすぎるけど、非常食にこれ以上求めることはないだろう。あえていうなら、冬場だと、30~40分ぐらい加熱袋に入れっぱなしにしておいても良いかもしれない。加熱袋は、水を加えてから1時間ぐらいは熱く、それから、だんだんぬるくなってきた感じだったので。

そういうわけなので、食品を暖め終わった後の加熱袋は、暖を取る目的では使用しない方がいいだろう。実際、自衛隊では禁止されているらしい。まあ、瞬発力がある分、民生用の使い捨てカイロと違い、持続時間が短すぎるので、そういう用途には不向きだし、何よりも、たぶん火傷する。ただ、それこそ冬場は暖かくする必要もあるだろうから、タオルを2重・3重にして、火傷しないような対策を講じた上で、カイロのように使うのは、(自己責任かもしれないが)、ありかも。

さてさて。実際に「戦闘糧食」なるものを食べてみたわけだが、問題がないわけじゃない。

それは、加熱に水が必要だということだ。加熱剤には、このように水を加えて熱を起こすタイプと、カイロのごとく酸素にさらすことで加熱するタイプの2種類が、自衛隊では装備されていて、個人的には後者のタイプがよかった。非常時に水は貴重だ。3食分をそれぞれ加熱するとなると、今回の場合、合計で450mlの水が必要になる。これは500ml1本分ほどに相当し、水が不足している状況では本当に貴重な量だ。しかも、戦闘糧食そのものに保存水すら付属していないし、計量するカップもないから、目分量で水を入れないといけない。戦闘糧食II型を携帯するときは、十分な水と、無駄にしないように計量カップを用意して置いた方がいいだろう。

まあ、もしこれが民生用だとすると、1食1食を個別に加熱するには、この方式が向いているのかもしれない。前述の、酸素にさらして加熱するタイプの加熱剤の場合、「加熱剤、主食、加熱剤、主食、加熱剤」といった具合に、暖めるものをサンドイッチして、タオルにくるみ、加熱と共に比較的長い時間保温することができるようだ。しかし、これは作戦行動中には向いているかもしれないが、避難所生活ではあまり向かない手段かも。だから破水型?というのだろうか、水を加えて加熱するタイプの加熱剤が、使われているのかもしれない(もっとも、自衛隊でもこのタイプは最近主流らしいが)。

ただ、水が付属していないのはちょっと解せない。まあ、重くなるし、スペースも取るし、普通は別途水筒を携行していたりハイドレーションパックに水を入れておいたりするだろうから、糧食に水が入ってないのも当たり前かもしれんが・・・。でも、別の機会に紹介しようと思っている「防災丸かじりセット」には500mlの保存水が入っていた。まあ、そいつは一つ一つの食品が小さいので、水を入れるスペースもできたんだとは思うけど・・・。

ということで、「戦闘糧食II型」は、なんだかんだ言って、非常時に暖かいご飯が食べられるというメリットがあるので、防災グッズの中に入れておくことをお勧めしたい。保存期間がきたら、新しいのを買って、古いのは普通に食べればいいわけだし・・・。

ただし、それなりにコンパクトな箱だとはいえ、3食分の食料となると、そうさなあ、お徳用の60個入り使い捨てカイロとか、ブラウンのひげそりのセンジョウカートリッジ(6個入り)ぐらいの大きさ・重さにはなるので、2日分、あるいは二人分が限界かな、とは思うけど・・・。ちなみに、アマゾンの情報では、商品重量は1.76kgだそうだ。これに、水と、あと、可能なら計量カップ。

そろそろ長くなってきたので終わろうと思うが・・・。1.76kgって1日分のレーションとしては軽い方だと思う。だって、イタリア軍のレーションは、1日分を片手で持てないと聞くし・・・。あと、米軍など日本以外の軍では、基本的に固形燃料とヒーターで食事を温める。それに比べて自衛隊はカイロなので、やっぱり軽いと思う。まあ、米軍とかイタリア軍みたいに、オレンジジュースだの、ゼリーだの、ナプキンだの、ビスケットだの・・・と、「おいおい、おまえらピクニックかよ」と思うものが入ってない・・・ってのもあるんだろうけどね。

それでは、機会があったら、今度は暖めずに食べるレーションを紹介してみたいと思う。以上。