NVDAはサーバーOSにも対応していますので、Windows 2008などのサーバーマシンにインストールすれば、全盲でもサーバー管理作業を行うことができます。しかし、いくつか気をつけなければならない点がありますので、ご紹介します。
想定される環境
ここでは企業内のサーバーにNVDAをインストールして、作業を行うことを前提とします。また、全盲が操作できるように、音声を出力する前提で進めます。
特に明示しない限り、OSはWindows Server 2008 R2のことを言っていると理解してください。
インストール先の想定
サーバーOSのインストール先としては、大まかに分けて次の二つが考えられます。
- 物理マシン上にサーバーOSがインストールされているパターン
- 仮想マシン(以下VMと略記)上にサーバーOSがインストールされているパターン
操作方法の想定
サーバーマシンを操作する形態としては次の二つが考えられます。
- 直接サーバーマシン(物理/仮想問わず)を操作するパターン
- リモートアクセスしてサーバーマシンを操作するパターン
取り上げる組み合わせ
最近は、VMでサーバー構築して、リモートで管理操作を行うことが多いと思います。ただ、物理マシンを直接操作することもあると思いますので、この2種類の組み合わせについて、NVDA利用時の注意点をまとめたいと思います。
なお、以下では「リモートデスクトップの有効化」は実施済みであると仮定します。リモートデスクトップ・サービスを有効にする手順はググってください。
物理マシンを直接操作する場合のNVDA利用
次の2ステップが必要です。
- オーディオ機能の追加
- [Windows Audio Service]の有効化
オーディオ機能の追加
まず、当然ながら、サーバーマシンにサウンドカードやオーディオインターフェースなどのオーディオ機能が必要です。しかし、普通サーバーマシンにそんなものは付いていません。どうにかして準備してください。
企業によっては、こういった入出力デバイスの接続を制限している場合があります。管理者と相談の上、会社規則等を順守してデバイスを接続してください。
なお、一応言及しておきますが、PCにサーバーOSをインストールしている場合はサウンドカードが搭載されている可能性もありますので、ご確認ください。
Windows Audio Service を有効化する
Windowsでは普通、音を再生するために[Windows Audio Service]というサービスが起動していなければなりません。
しかし、少なくともWindows Server 2008 R2では、デフォルトで[Windows Audio Service]が起動していません。Windows Server 2012でも同じだと思いますが未確認。あと、エディションによってデフォルトの状態が違う場合もあるようです(例えばWindows Server 2003では、Standardエディションだとサービスはデフォルトで起動しますが、Enterpriseエディションだと無効になっていました)。
このような事情から、初めに[Windows Audio Service]を起動する必要があります。
以下にWindows Server 2008 R2の場合の手順を示します。
- スタートメニューの[検索]またはコントロールパネルから、[管理ツール]を開きます。
- 管理ツールから[サービス]を開きます。
- サービスの中から[Windows Audio Service]を選択し、マウスを右クリックするかキーボードのアプリケーションキーを押してポップアップメニューを出し、[プロパティ]を開きます。
- [スタートアップの種類]を[自動]に設定して[OK]ボタンを押します。
この手順を実施することで、サーバーを起動する度にWindows Audio Serviceが起動するようになります。NVDAをサーバー上で利用する場合はこの設定にしておくのが便利です。
※ただ、業務機能的には余計なサービスを起動することになるので、運用担当者と調整してください。
NVDAの利用を停止して、[Windows Audio Service]の起動も止めたい場合は、上記手順の4.で[スタートアップの種類]を[無効]に設定してください。
以上で、物理マシンを直接操作する方式で、NVDAを利用する準備は完了です。通常と同じようにNVDAをインストールするか、ポータブル版から起動してください。
VMのサーバーマシンをリモートで操作する場合のNVDA利用
VMのサーバーをリモートで操作する場合、次の要素を考慮しなければなりません。
- 仮想環境にどのソフトウェアを使用しているか
- リモート操作にどのソフトウェアを使用しているか
何故これらを考えなければならないかというと、
- 第1に、ホストの仮想環境がオーディオ機能に対応しているか否か、
- 第2に、リモート操作ソフトウェアがオーディオ機能に対応しているか否か
という2点の問題をクリアしなければならないからです。
実はこの2点を満足する組み合わせは結構限定的です。
例えば有名な仮想環境に「VMWare ESX/i」というソフトウェアがありますが、このソフトウェアは各VMにオーディオ機能を提供できません。
また、リモート操作ソフトウェアも、画面を転送する機能は100%持っていますが、音声を転送する機能は持っていないものも多くあります。当然ながら、サーバーマシンがオーディオ機能に対応していても、リモート操作ソフトウェアが音声を転送できなければ、全盲がNVDAを使うことはできません。
Windowsのリモートデスクトップを使えばクリアできる!
そういうわけで、どのようなソフトウェアであればVMのサーバーをリモートで操作できるかというと、とりあえず仮想環境のことは置いておいて、リモート操作ソフトウェアに「Windowsのリモートデスクトップ(以下、単にリモートデスクトップ)」を使うのがベストです。
その理由は、リモートデスクトップのセッション中はリモートオーディオ機能が有効になり、音声が出力されるためです。リモートオーディオ機能はホストがオーディオ機能に対応していなくても有効になるため、NVDAを音声で使うにはリモートデスクトップが一番確実です。
ただし、Windows Serverでリモートオーディオサービスを使用するには事前設定が必要です。
リモートホスト(操作したいサーバ)にて、次の2ステップを実施してください。なお、これらの手順は晴眼者にやってもらいましょう。
まず、こちらの手順を参照して、Windows Audio Serviceを起動してください。
次に、以下の手順で「リモートデスクトップのセッションに対してオーディオの転送を許可する」設定をしてください。
なお、この手順は Windows Server 2008 R2 で試しています。 Windows Server 2012 だとどうなるかは未確認です。
※ちょっと、画面名とかを忘れてしまいましたが、手元にWindows Serverがないのでお許しを・・・。確かグループポリシーの設定画面だったはず・・・。
- [ファイル名を指定して実行]を開き、次のコマンドを入力します。
gpedit.msc - 開いた画面で、ツリービューから[コンピュータの構成]->[管理用テンプレート]->[Windowsコンポーネント]を開きます。
- 続いて[リモートデスクトップサービス]->[リモートデスクトップセッションホスト]->[デバイスとリソースのリダイレクト]を開きます。
- [オーディオのリダイレクトを許可する]をダブルクリックし、[有効]にチェックします。
- 画面を閉じます。
以上で、オーディオ機能に対応していないWindows Serverに、リモートデスクトップで接続し、NVDAの音声を聞きながら操作することができるようになります。
切断時の注意点
オーディオ機能の無いVMにリモートデスクトップ接続している間は、リモートオーディオサービスによってオーディオ機能が認識されますが、リモートデスクトップを切断すると、VM上からオーディオ機能が無くなってしまいます。
この影響で、NVDAが音声の出力先デバイスを見失ってしまいます。そのため、次にリモートデスクトップ接続したときに、うまく音声が出ないことがあります。
NVDAはプライマリのサウンドデバイスが変更になると音声出力先も自動的に変更してくれるはずですが、際接続時にリモートオーディオサービスがプライマリになっても、何故かうまく音声が出てくれません。
従って、次のステップで切断するのが安全です:
- NVDAを終了する
- リモートデスクトップを切断する。Windows Server 2008 R2の場合、Windowsキーを押してから、右矢印キーを2回押して、Dキーを押せば切断できます。
- 次回接続時は、リモートデスクトップ接続後にNVDAを起動
実は「NVDA Remote Access」というのがある
これまでに書いたことは、それなりに作業コストがかかります。だれかに支援してもらわないといけないし、環境的にも微妙な場合もあるでしょう。
ところが、記事執筆時点(2015年4月)で、NVDA Remote Accessというプロジェクトがクラウドファンディングで資金を募っています。既に目標額は達成していて、ある程度開発も進んでいるようなので、全盲の管理者にとっては待ち遠しいものですね。
ちなみにNVDA Remote Accessのサイトでは、デモ音声(英語)が聞けます。残念ながら僕は聞いてもよく分からなかったので、だれか補足おねがいします。