NVDAとテキストエディタ

### はじめに

オープンソースのスクリーンリーダーである「NVDA」は、日本でもだいぶ普及してきました。

多くの場面でNVDAは有用なのですが、必ずしも得意でない分野もあります。 それは「テキストエディタ対応」です。 テキストエディタのNVDA対応というべきでしょうか。

この問題はこれまで何度も議論されてきたことかもしれませんし、未だに選択肢が少ないという状況にあります。

そこで、本記事では、NVDAを取り巻くテキストエディタの状況についてと、可能であれば個別のテキストエディタについて、NVDAで使用する際の方法について説明します。

### 結論~NVDAでまともに使えるテキストエディタは?~

いきなりですが、先に書いておいた方が、実用性のみに興味がある方には良いかと思いますので。。。

一般的な文書作成を目的とするならば、以下の四つが、NVDAで使える最適なアプリケーションでしょう。

* Windows付属のメモ帳
* Notepad++
* VAMSE for Us
* LibreOffice Writer
* Microsoft Word

後者の二つは「ワープロソフト」とか「オフィスソフト」という分類になるかと思いますが、日本語編集には十分な機能が備わっており、特に Word についてはビジネス利用も多いことから、今後もNVDAの対応が継続されるでしょう。

メモ帳は言うまでもなく、NVDAで使える最高のエディタの一つです。 もちろん、エディタとしての機能は、大変に残念ですが。

Notepad++は、NVDAの本家というか、NVAccessというか、とにかく英語圏のユーザに対しては推奨されているエディタです。 開発者向けのサイトに、Notepad++を使うことが推奨されていました(確か)。 プログラムを書くには良い機能がいろいろありますが、日本語対応という点では残念な感じです。 一部日本語化はされていますが、日本語固有の処理(全角半角変換)や整形といった機能を多様する場合は、お勧めできません。 それに、日本語化されているといっても、中途半端なので、やはり違和感も残ります。

VAMSE for Us は、はっきり言って無名なテキストエディタかもしれません。 しかし、PC-Talkerに付属のマイエディットのように、文字の拡大ができたり、公式にNVDA対応を歌っていたりするエディタです。 ちょっと癖があるエディタですから、慣れるまでは時間がかかるかもしれませんが、今後のNVDA対応エディタの有力候補でしょう。

さて、開発者向けのテキストエディタでしたら、次もそこそこ使えそうです。

* Visual Studio Code

日本語を書くには向きませんが、NVDAで使いやすくなってきています。 ただ、UIがWebっぽいので、プルダウンメニューなどから操作を実行できません。 見た目ではたぶんリボンらしきものなんかは普通に見えるんでしょうけど、スクリーンリーダー的には、ネイティブなリボンとは見え方が違います。 なので、NVDAで実用的かどうか?という点はまだ疑問符が残ります。

数多あるテキストエディタの中で、これだけしか有力な候補がないことに、記事を書きながら悲しい気分になっているところですが。。。 おそらく、様々な機能を搭載するために、テキストエディタの開発では様々な工夫がされていて{※}、その影響でNVDAの読み上げが苦戦しているのだと思います。

※開発者の都合の話ですが、自作のエディットフィールドなんかをつかうと、Windowsの標準エディットを使うより、かなり楽に作れると聞いたことがあります。 Windows Form のころはそうだったのかもしれませんが、 WPF になっても、その辺は変わらないのでしょうかね?

ここまでに紹介したテキストエディタの入手先(または情報サイト)は、記事の文末にまとめてあります。

さて、先に結論を書いたところで、以下に細かい話を書いていくことにしましょう。

### NVDAから見たテキストエディタの「三つの分類」

私はたくさんのテキストエディタを試してきました。 そこで、NVDAで使うことを考えたときに、多くのテキストエディタが、__三つの対応状況に分類できる__ことに気づきました。

1. 対応に問題なし
2. 基本的には使えるが、制限あり
3. 実用的には使えない

1.は先ほど紹介した四つのアプリケーションです。

3.は、起動して新規文書を作ったところで、うんともすんとも読まないアプリケーションです。 後述しますが、 Sublime とか、クロスプラットフォームのテキストエディタに多い傾向があります。

問題は2.の「基本的には使えるが、制限あり」に分類されるものです。 ここには「秀丸エディタ」や「EmEditor」などの有料かつ高機能なエディタも、フリーソフトとして配布されている高機能エディタも、どちらも属しているのです。

この分類に属するテキストエディタについて。
「基本的に使える」というのは、一般的に使用されるであろう文字の読み書きにはあまり問題がないだろう・・・ということです。 かなり不明瞭な評価ですが、このことは後ほど説明します。
「制限あり」というのは、エディタの使用上のこともありますし、あるいは設定変更によって__ましになる__という状態の、どちらも含みます。

さて、ここまで書いてきたことは、あくまで、私がテキストエディタをあれこれNVDAで使ってみた感想に過ぎませんが、一応、記事にするに当たって、一定の尺度(になるかどうかは不明)を持って試しています。 そのことを次に説明します。

### テキストエディタの評価項目

前述の3分類を行うに辺り、評価項目を定めています。 それらの評価自体は主観的かもしれませんが、一応、分類した理由を説明するために、評価項目を記載しておきます。

1. カーソルキーによる読み上げ
2. 全文読み
3. Shiftキーを使って範囲選択
4. メニュー操作
5. テンジディスプレーのタッチカーソル

それぞれについて、詳しく説明します。

「1. カーソルキーによる読み上げ」は、上下左右カーソルキーで文書内を移動したとき、文字を正しく読み上げるかどうか、の評価項目です。 NVDAでもときどきありますが、文字が書いてあるのに「空行」と言って正確な読みを行わないことがあるので、評価項目に入れました。

「2. 全文読み」は、 NVDAキー+下矢印キー(デスクトップ配列)、または NVDAキー+Aキー(ラップトップ配列)で、カーソル位置から文末まで読み上げることができるかどうか、の評価項目です。 メールなんかだと私はよく使うのですが、テキストエディタで自然言語を扱う場合は、対応しているかどうかを評価してもいいかな、と思った次第です。

「3. Shiftキーを使って範囲選択」は、Windowsのエディタですとよく行われる操作ですが、調査の初期段階で、選択範囲を読み上げないエディタが複数ありましたので、評価項目に追加しました。

「4. メニュー操作」は、Altキーを使ってプルダウンメニューを表示し、操作できるかどうかを評価する項目です。 「Visual Studio Code」に関して少し書きましたが、現在のところ、プルダウンメニューによる操作の方が、スクリーンリーダーユーザーにとってはまだなじみ深いと思ったので、追加しました。

「5. テンジディスプレーのタッチカーソル」は、点字ディスプレー使用時に、タッチカーソルを押して目的の文字にジャンプできるかを評価する項目です。 点字については、スクロールとかワードラップとか、評価すべき点は多々ありますが、とりあえず今回はタッチカーソルでの移動(編集作業ではわりと多様するはず)の評価だけ行うこととしました。

### 分類別テキストエディタ

さて、評価の基準となった項目を紹介したところで、先に挙げた分類のどれに、どのテキストエディタが属するか、まとめておきます。

なお、それぞれのテキストエディタに関する評価結果および追加的なアドバイスについては、別項で記載する予定です。ご了承ください。

#### 対応に問題なし

* Windows付属のメモ帳
* Notepad++
* VAMSE for Us
* Libre Office
* Microsoft Word

#### 基本的には使えるが、制限あり

* 秀丸エディタ
* EmEditor
* WZ Editor(ただし設定変更必要)
* GPad++

#### 実用的には使えない
* VIM
* NT Emacs
* Atom
* Sublime
* Brackets

### 「対応に問題なし」のアプリケーションの入手先

以下に、上記で「対応に問題なし」として挙げたものだけ、入手先を記載します。 他のものについては別記事にしますので、そちらをお待ちください。

* Windows付属のメモ帳 →「Windows」に付属
* Notepad++ →[Notepad++ ホームページ](https://notepad-plus-plus.org/)
* VAMSE for Us →[VAMSE for Us ホームページ](http://nakanaka-tools.com/vamse/index.html)
* Libre Office →[Libre Office 公式ページ](https://ja.libreoffice.org/)
* Microsoft Word →[Microsoft の公式ページ](https://products.office.com/ja-jp/word)

### 今後に向けて

私はNVDAをメインのスクリーンリーダーとするユーザーです。 ですから、NVDAで使えるテキストエディタについては、今後も探求していきます。 新しい情報が入手でき次第、本記事も更新していきます。

また、ここで紹介していないエディタも含め、評価項目に沿って評価を行ったリストを、近日公開予定です。 今後はそちらも合わせてご参照ください。


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