少し前に、JRなどの鉄道各社が、エスカレーターで歩かないよう呼びかけるキャンペーンをやっているというニュースを見た。

JR東日本ら鉄道事業者、エスカレーターの安全利用を呼びかけるキャンペーン | マイナビニュース

ところが、このキャンペーンはどうやら「無駄」だったようである。

エスカレーター歩かないで!JR呼び掛けも「知らなかった」 ― スポニチ Sponichi Annex 社会

エスカレーターで片側を空けることは悪習だと個人的には思うが、「それがマナーである」と認識している人は多いようだ。実際、私も片側に寄ってしまうし、人の流れの関係で両側を占有する状態になってしまうと、「止まってないで歩けよ」的な雰囲気を、周囲からひしひしと感じる。

どんなことでもそうだが、マナーと認識されていることや慣習を変えることは容易でない。エスカレーターで歩かないようにしてもらうのも、ただPRするだけでは、はっきり言って無駄である。唯一、ポスターを作るため印刷業者はうれしいかもしれない。

マナー、慣習を変えるには、ルール(法律)を変えるか、物理的に仕組み(インフラ)を変えてしまうかしかない。

例えば、「エスカレーターで歩いたら罰金千円」という罰則ルールを設ければ、歩く人は激減するはず。これは路上喫煙に罰則を設けた例と比較すれば、そんなにずれていない発想と考えられる。

あるいは、エスカレーターの幅を「一人用」に統一することで、歩こうと思っても歩けなくなる。片側を開ければ反対側を歩けるようになっている今のエスカレーターが悪いのだ。

当然、これらの対処には問題点もある。

前者のように罰則ルールを設けると、監視員を配置する必要があるのでコストがかかる。また、利用者からは苦情の嵐がやってくるだろう。

後者のようにインフラを変えるとなると、工事が必要なのでやっぱりコストがかかる。しかも、一度に運搬できる人数が減る(設置スペースは変えられないため、同じ場所に一人用エスカレーターを2本敷設するのは無理だと思う)ので、仮に実現したとして、エスカレーターの混雑がどうなるか・・・。または階段に流れる客が多くて、今度は階段利用についていろいろと検討が必要になるかもしれない。さらに、具体的には分からないが、一人分の幅では困る人がいるかもしれない。もちろん、利用客から苦情の嵐がやってくるだろう。

あとは、そういう諸々のコストと、エスカレーター事故による運営者側の損失を比較して、投資すべきかどうか、ということになるだろう。

でも、さんざん書いて思ったが、一人用のエスカレーターを2本設置すると、どっちかが歩行用エスカレーターになりそうだから、やっぱりインフラを変えるなら、上り・下りで一人用エスカレーターを1本ずつにすべきだ。そうすると、エスカレーターの存在意義が問われることになるかもしれない・・・。電気代かかるし、少ししか人運べないし・・・。

ただ、外国でもエスカレーターの片側を空ける習慣があるようなので、結局、いろいろ考えても、それこそ無駄かも・・・。あぁ、なんて贅沢。