ちらっと昨日書いた、乙武さんの入店拒否問題が結構盛り上がっているみたいなので、草葉の陰から眺めてみた感想をば。あくまで感想ですから、論点がはっきりしないとかいうことは、気にしないで。

改めて書いておくけれども、私は全盲です。車いすは使っていないが、障害者である。障害者の立場で乙武さんの心情を思うと、むかつくとか腹立つ気持ちは分かる。障害者だから食べたいイタリアンも食べられないというのは、差別だと思う気持ちは、重々承知。

話は脱線するが、別の例でも似たようなことはある。例えば障害者が独り暮らしをするために部屋探しをしていると、大家さんに断られて契約できないケースが多い。私も何回か断られたことがあり、それはそれは腹が立った。

話を戻して。一方、店側の言い分も当然のことであろう。人手が少ない上に、いきなり「車いすと人間を運んでくれ」と頼まれると、まぁ、普通は戸惑う。事前に連絡があれば、段取りを考えておくこともできるが、そうでもなければ、断る店側の気持ちも分かる。

これをさっきの部屋探しの例で言い換えると、どうやって生活しているかも分からない障害者に部屋を貸したら、普通ではないことが起きるのではないかと、大家さんが思っても、そんなに不思議でも不自然でもないことだ。全盲の場合、火の始末(ガスコンロとか)をどうするかということを、90%ぐらいの確率で尋ねられるのだが、普通は疑問に思うだろうし、「何か解決策があるのかもしれないからリスクを取るのはやめよう」と思う人もいるだろう。

で、私としては、どっちが善でどっちが悪かということはどうでもいい。どっちもどっちだからだ。っていうか、乙武さんのブログしか読んでないので、事実関係に基づく判断は、公平な立場ではできないというのが本当のところである。

けれども、彼のブログに書いてあることについて、いろいろとつっこみたいことがあるので、それは暇つぶしに書いておこうかな。

まず、乙武さんは店舗に対して車いす利用であることを連絡したことがあまり無いとのこと。ちょっとこれは、普通の障害者には想像ができないのではないか?いや、これは俺個人とか全盲の発想かもしれない。多人数の盲人で押しかけるときとか、事前に予約が必要な店に対しては、事前にその旨を連絡して了承を得るのがマナーだと思っていたのだが、俺は。いや、流石にスーパーとかコンビニとかマクドナルドには事前連絡したことはないけれども・・・。それにしても、連絡無しでよく車いすユーザに対応してくれたなぁと思うのは、俺の知識が足りないだけなんだろうか。

と思ったら、普段は事務所のスタッフとか有人が面倒見てくれてたようだ、乙武さんは。あぁ、事務所のスタッフかよ。了解しました。あと、行けそうなところは自分でも階段上がって行くそうで・・・。

さて、次につっこみたい箇所。ホールの男性スタッフは、どうも乙武さんを運ぶために階下へ降りようとしたらしいのだが、それを店主が止めたそうである。え?何故止めるの?ホールスタッフが対応できるんだったら、それをわざわざ止めなくてもいいのでは?

まぁ、乙武さんがブログ内で書いているように、料理を出すタイミングとかがあってホールスタッフを止めたのかもしれないが・・・。でも、そこは店主自らが料理を運ぶぐらいのことはできなかったのかなと思う。シェフが独りのようなのでしかたないかもしれんが、シェフが自ら客に料理の説明をするサービスでもすれば、それはそれでいいと思うし、そうしている間、ホールスタッフが料理を作るわけでもないだろうから、そういうふうにタイミングを合わせるやりかたもあるだろうに・・・。と、実はこの議論は全部後付け論であって、当時その場でそんなこと思いつくはずはありませんね。

では次に参りましょう。実際、お店の中でスタッフとやり取りしていたのは同伴していた女性だったようなのだが、店主から「対応できない」と言われて女性が乙武さんの待っている外へ戻ったあと、店主が階段を下りてきたそうな。それで、「事前に連絡しろ」とかいろいろ言ってきたそうなのだが・・・。そこで乙武さんは「そもそもそういうこと(事前連絡)をせずとも外食を楽しんできた」という趣旨の発言をしたということである。

ここでつっこみたいのは、一つに、何故店主がわざわざ降りてきて本人にいろいろ言ったかということ。まぁ、店は狭いみたいだったし、やり取りは店の客にも丸見えだっただろうから、「ばつが悪いからとりあえず店を出て」、「本人がまだいたから思っていることを言った」ということなのかもしれない。事情はどうあれ、最低でも、店主の人は「申し訳ありません、次回からは連絡頂ければ対応しますから」ぐらいは言ってもよかっただろう。ぶっちゃけ、建前でもいい。本音は「この常識知らずが!ぼけ!」と思っていたとしても、サービス行やってんだったら建前の一つでも使ってその場はやりすごして欲しいものである。

そして、もう一つの突っ込みは乙武さんの発言。はっきり言って、そんな事情、言われた方にしてみれば知ったこっちゃない。あ、でもこれを言ったらおしまいかも・・・。それを言ったら、サービス行は「そんなもん知ったこっちゃない」で終わってしまうなあ。うーん、個人的にはこの発言、客からするのはちょっと・・・。というか、そうか、言い方が少しあれなんだな。もっと丁寧に、最初に「これはクレームです」と断っておけば良いかもしれん。俺はあまり気に入らないのだが、そういうと「他店でも1円より高い場合はスタッフにお知らせ下さい」とアナウンスしてる電気屋のサービスを否定することになってしまうなあ。

と、ここまで書いて。しまった、俺も似たようなことを、たまに言ってることに気がついた。PC周辺機器を買ったとき、ファームウェアのダウンロードに本体に張ってあるシリアルナンバーが必要だったのだが、当然全盲にそれは読めず、サポセンに事情を説明したのだが、「シリアルナンバー無しではダウンロードして頂けないシステムになっております」の一点張りだったメーカーがあった。別メーカーの類似商品でも同じくファームのダウンロードにシリアルが必要だったことがあったが、そのときは「今回は特別にダウンロードできるように致します」と言ってもらえたことがあったので、そのときは「○○さんでは対応してくれましたけどね」みたいに、サポセンのおねえちゃんに言ったことが・・・。そういえばあったなあ・・・。

すいません、なので、前言撤回。ブログに文字を残したまま前言撤回というのもなんだが・・・。まぁ、「一度発した言葉は消せないのだよ」ということの照明です。

とりあえず突っ込みたいことは終わったので、最後に言いたいこと。

結局、今回の入店拒否問題。声を上げたのが乙武さんじゃなければ、せいぜい2CH掲示板でスレが立ったり、ツイッターで該当の発言に対するコメントがちょいちょい書き込まれたり、ひっそり店が謝罪文を掲載して収束していく問題だと思う。ポイントは、知名度の高い人の発言は影響力があるということなのだ。

乙武さん、確か4月の朝まで生テレビで、ツイッターの良い点と悪い点について自身の解釈を偉そうに述べていたと思うのだが、結局、メディアの性質を理解できてなかったってことなんじゃないかと思う。ソーシャルメディアのせいで炎上した個人や企業はたくさんあるんだから、今後はその辺の事情も学習してものを言ったらいいと思いますよ(上から目線)。

ぶっちゃけ、入店拒否とか、盲導犬連れてる人なんかもよく経験するんじゃなかろうか。イスラエルの爆弾テロみたいに、日常的なことのように感じるが・・・。

まぁ、いろいろ感想を述べてきたけれども・・・。みんな同じように利用できるサービスが一番なんだけどね。個人が店に改善を訴えたところで効果はほとんどないんだけどね。ネットで名前晒す方が効果的なんだけどね。さっきからずっと、うんこを我慢しながら書いていて、そろそろ限界だから、トイレに行って寝ます。さようなら。

【参考】 乙武さんのブログ
イタリアン入店拒否について | 乙武洋匡オフィシャルサイト