俺が学制だったころ、盲学校に教育実習に行った。で、直接聞いたわけではないが、全盲の生徒が「回転寿司を自分で取るにはどうしたら良いか」について全盲の先制に訪ねたことがあるそうだ。その全盲の先制の答えは正直あっさりしていて「取ってもらう」だったらしく、生徒は結構落胆していたようだ。

その話を聞いて、俺もじつは同じ悩みを持つ全盲として何か解決策を提案できないかと思案した。そして、回転寿司を全盲でも利用できるシステムを考え出した。

このアイデア、確か前にも書いた気がするのだが、昔のブログを検索してもみつからないので、改めてここに書いておくことにしよう。NECとか日立で作ってくれないかね、このシステム。

まず回転寿司の定義であるが、以下のように定義する。

【回転寿司の定義】
  • 円形の皿に寿司を乗せて客に出す
  • 皿をベルトコンベアに乗せ、ベルトコンベアを回転させることによって皿を席まで運ぶ
  • 客は自席の周囲に来た皿に対し、、自分の食べたい寿司が乗った皿、または何らかの方法でその客用に握られた寿司であることが判別できる皿を取って食べる

この定義の下で全盲が結えの問題点として、以下が挙げられる。

  1. 皿に乗っている寿司のネタを識別できない。何故ならば普通ベルトコンベア上を回っている寿司のネタを識別するためには目視するが、全盲は目視できない。
  2. 仮に全盲がネタに触ることができるとしても、さらに次のような問題がある。
    • 触ったところで難のネタか判別することは困難である。マグロとサーモンの違いは触って分からない。サーモンにはタマネギが乗っているとか、店毎に統一されているとは考えにくい指標で判断するのは危険である。もしサーモンにはタマネギが乗っていることが常識だとしても、ブリとマグロは触っても分からない。
    • 不衛生である。他人が触った寿司なんぞ、食いたくもねえ。

以上のことから、全盲が回転寿司を利用するためには、以下の条件を満たすような仕組みが必要である。

【全盲が回転寿司を利用するための条件】
  • 触らなくても、自席の周囲を流れている皿に乗っている寿司のネタが何であるか識別できる。
  • その皿が自席から注文したものか否かを判別できる。

そこで、全盲でも回転寿司を利用するために、以下のシステム化構想を考えた。

【全盲が利用できる回転寿司のシステム化構想】
  1. 皿に非接触型ICチップを埋め込む
  2. ICチップには皿に乗っている寿司のネタの情報をインプットし、ベルトコンベアで流す。必要に応じて、席番号等の付加情報もインプットする。
  3. 客はICカードリーダを所定の位置にセットし、自席を通過した皿のネタを識別する。

たったこれだけだ。これだけのシステムを構築すれば全盲でも回転寿司を利用できる。ただし、現在普及している、タッチパネル端末での注文に対応することは別の問題だ。回転寿司を利用できることと、タッチパネル端末から注文できることは別の問題である。けれども、実際は両方できないと現代の回転寿司を利用できるとは言い難いが、ここではより本質的な「回転している寿司をどう識別するか」ということをメインテーマとして話を進める。

さて、単に上記のICチップシステムを組み込んでも、実際うまくはいかない。寿司を握る職人と、寿司を取る客がそれなりの運用を行わないと破綻する。

まず寿司職人の方である。その前に、皿にICチップを埋め込んで情報をインプットする手段としては大きく以下の2種類が考えられる。

  • 予め皿にネタ等の情報をインプットしておく
  • ネタの情報をベルトコンベアに乗せる直前にインプットする
    • ここで寿司職人の運用の話になる。前者の方法では、寿司を乗せる皿が予め定められているため、皿の色とか形とか、とにかくきっちりとICチップの情報に合致する寿司を乗せなければならない。だが、一般的に皿の色等は価格を表現するために用いられているし、皿と寿司のネタを1対1に対応させなければならないのは現実的でない。

      次に後者の方法であるが、これなら寿司を乗せる皿を選ばなくても良い。しかもベルトコンベアに乗せる時点で、ネタと、注文の品の場合は席番号等の情報も付加できる。寿司職人がシステムを操作する必要はあるが、運用としてはこちらが現実的だろう。

      続いて客の運用方法について考えてみる。

      よく知らないが、現在の技術では、ベルトコンベア上の皿の密度を考慮すると、非接触型ICカードリーダで識別できる皿は、リーダのすぐそばにあるもの、つまりはカードリーダの眼前を通過した皿ことになるだろう。ひょっとしたら1,2個前後の皿の情報も識別できるかもしれないが、できない前提で話を進める。

      そうなると、カードリーダが識別した後、たぶん音声とかで情報を知らせることになるが、客が情報を取得した時点で、識別した皿は既に通り過ぎていることになる。まぁ、ベルトコンベアの回転速度にも依存するので、実際の回転寿司で回転速度の平均値を計測するなり、店毎にカスタマイズするなりの対応でなんとかなる気もするが・・・。要するに、識別された皿を取るには、ちょっと先の皿をとる、という動作が客には求められるのだ。

      従って、全盲の客は、具体的に何皿分先行した皿を取れば目的の寿司を食べることができるか、どうにかして把握しておかなければならない。

      以上のような運用面をクリアできれば、技術的にはそう難しい話ではないはずだ。

      さっきも言ったが、NECか日立か三菱か、システム化して下さい。とりあえず、スシローに導入してくれればいいです。