最近の俺は悩み人なのだ。とても悩んでいる。いったんは結論を出したことで、俺自身の考えから言ってもその結論は妥当であるのだが・・・。その結論を正当化して本当に良いものかどうか、理屈を超えて感情論で悩んでいるのである。

何に悩んでいるのかというと、かなり親しい有人が「ネットワークビジネス」にはまってしまったことである。もっと具体的に言えば、ネットワークビジネスって俺は嫌いなのだが、それにはまっちゃった有人と、どのように付き合えばよいかということである。

本論に入る前に、何故俺がネットワークビジネスが嫌いなのか説明しよう。言いたいことを先延ばしにして、割とどうでもいいことでお茶を濁すのは俺の得意技である。

まぁ、ネットワークビジネスといっても多種多様な形態があり企業によっても精度は違うだろう。まぁ、私がターゲットにしている企業はだね、あれです、あえて名前は書きませんが「ア」で始まるやつですよ。ちょっと前はCMでもよく見かけた「ア」のつくマルチ商法と言えば、ほぼ分かるでしょう。

で、古い情報かもしれないが、その会社の制度というのは「ネットワーク」という名に全くふさわしくない。階層型ビジネスという方が適切なようにも思える仕組みと理解している。あくまで90年代後半の知識に基づいているので現在はどうか知らないが、少なくとも俺にはそういう偏見があるということだ。

この会社については、一般的にあまり良い話は聞いてなかったけれども、最も俺の心を動かしたのは、親の知り合いにもこれをやってる人がいて、しっつこく勧誘していたのを見たことだ。まだ小学生かそれ以下だった子供の俺からみても、度が過ぎた勧誘だった。結局俺の親はそんなしつこい勧誘にも屈せずにいたのであるが、思えば昔から親には大変口うるさく「そういうことに関わるんじゃないよ」と言われたものだ。簡単に玄関のドアを開けずに、知らない人がきたらまずお母さんを呼びなさい、的な・・・。どうも俺が4歳ぐらいの時に、名にも知らないでドアを開けてしまったら、何かの押し売りをする人だったらしく・・・。それが原因というよりは、むしろお母様の様々な人生経験からそういうことを思ってたんじゃないかと予測していますけれども・・・。

おっと、それでだ、俺が「ア」のつくやつらを嫌いな理由ですが・・・。これは例の有人から聞いた時に思ったこと。「これは権利収入とか不労収入というものだから、一生懸命働いてどうこうというのじゃないんだよ」と俺の有人は俺に言ってきた。はっきり言って「こいつ馬鹿じゃねえのか」と思った。

まず、「ア」の付く会社の、俺が知っている限りの制度体系を前提とするなら、「権利収入」という点は正しい。全く正しい。会社の担当者は「ネズミ講と違うので後からやり始めた人が損をするということはありません」っていう説明をするらしいけれども、会員が人を勧誘してさらに会員を増やした時、勧誘する側とされる側に親子関係が生じ、子の売り上げの一部が親のインセンティブとして入ってくる制度のどこが「後から入った人は損しません」なのか全く理解できない。単なる言葉遊びだ。損はしてないけど、早く始めた人が有利なのに変わりねえじゃん。

次に不労収入という点だが、「ア」の付く会社って、そこの取扱商品を他人に売りつけて自分の利益にする商売だ。こう書くとすごく卑しく聞こえるが、俺に言わせてみればそういうこと。法的には「連鎖販売取引」と言って違法ではないみたいだし、なんというか、まぁ、営業ならそんぐらいやるだろうなとは思うが・・・。それはともかく、人に物を売ることが果たして「不労」なのかというのが俺の疑問なのだ。物を売るって、はっきり言ってとても大変なことである。誠実にやるとすれば、商品のメリット・デメリットを熟知し、顧客の疑問や悩みにも紳士に対応し、信頼関係を構築できて初めて物は売れるのではなかろうか。このプロセスのどこが「不労」なのか。重労働の間違いじゃなかろか?

子供のころも思ったことであるが、大した知識もないくせに物を押し売りしてくる連中というのは、たいてい感情的なうたい文句を使う。まぁ、無知な人とか、おつきあいだと割り切っている人はそれで納得して買ってしまうのかもしれないが、少なくとも俺はそんなんじゃ納得できない。人から聞いたような文句を並べて「ここのサプリメントは自然の成分だけを使っているから品質はいいらしいよ」と言われても、じゃぁ具体的に他の商品と何がどう違うのかちゃんと説明しろ。っていうか「らしい」ってなんだ、お前は使ってみてどうなんだよ?まぁ、売る立場だとね、良いことしか言わないでしょうけれども・・・。

権利収入と不労所得についてはこんな感じである。最後に付け加えるなら、本当の権利収入というのは、例えば土地を持ってる地主だったり、ミッキーマウスを作ったディズニーだったり、運か才能に恵まれた人だけが持てるもんだと思うよ。運も才能もない人はこつこつ、そういう人たちの下で働くしかない。

さて、「ア」のつく人たちを俺が嫌いなのにはもう一つ大きな理由がある。俺には怪しい宗教と区別がつかないのだ。その理由は手口にある。

まず、宗教にしてもそういったビジネスにしても、「最近の生活に満足できてる?」とか「何かやらないといけないと思わない?」というところから始まる。まぁこれはいい。で、そういうことを話しているうちに「いい話がある」という展開になってくる。こちらが「どんな話」と聞いても向こうはさっきの権利収入とか不労所得という魅力的な言葉を残し、具体的な話はしようとしない。で、こちらが渋り出すとようやく本題に入る。

要するに、人の弱みにつけこむというか、心の隙間をつくというか、そういう手口に思えるのだ、俺にとっては。しかも、そういうやつらは大変気持ち悪いことに、初めはかなり強く押してくるのに、こちらが鈍い反応とみるや一歩引いて「いや、無理することはないんだ。ただ俺はお前の気持ちを分かってるつもりだから進めてるんだよ。決してお前にこれを勧めて設けようとかは思ってないんだ。お前の悩みも理解できるから、お前のことを考えてるんだ。」とのたまう。これが、俺にはどうにも気持ち悪くて吐き気がするのである。他人に俺の気持ちが分かってたまるか、このインポ野郎。

で、やっと本題に入いろうではないか。私の有人はそういう馬鹿なまねはしない、常識のある人間だと思っていた。いや、もう酔っぱらっているからいうけれども、今の世の中でそういうのを新たに始めるって、世間知らずもいいところだと俺は思うのだよ。つまり、「彼がそんな世間知らずなファッキンデブだったのか」ということと、それを見抜けなかった自分に腹が立つのだ。

その有人はいろいろと腹を割って話せるやつだ。一方でやつがはまり込んでしまった組織を俺は嫌悪している。でも、もう俺もそいつも子供じゃない。やつの行為に俺が朽ちだしする権利なんか無いので、いくら俺がやめて欲しいと思っても、俺がそれを彼に強制するどころか、発言することも出しゃばりだと思ってしまう。

もっと言うなら、もし俺が正義感の強い人間なら、彼をまともにすべく働きかけていただろう。ただ、残念なことにというか幸いなことにというか、俺はそんな面倒なことはしたくない。やつが選んだんだから、やつの好きにすればいいと思う。

そういうわけで、俺の嫌いな組織に所属してしまった有人との付き合い方について、基本スタンスはもう決まっているのだ。深入りはしない。できればその件で関わりたくない。その件でなくても、いつどんな時にその件に誘導されるか分からないので、普通の付き合いも避けたい。そういうことだ。

でも、そのスタンスが俺自身の感情や根底にある考え方から言って妥当なものであったとしても、将来的に有用なことかと言われると、本当にそうなのか?と疑問に思ってしまう。これまで俺は割と人間関係を大事にしてこなかったので、余計そう思うのかも知れない。

頭では分かってるんだけどね。もうやつとは今までのように接することはできないと。これがさ、俺って弱い人間なんです。彼から「最近のお前、なんか変だよね。俺のこと避けてる?」ってメールがきたことがあって・・・。当然「ア」の付く話の後である。彼の言う通り私は君を避けているのだけれども・・・。そうだと肯定できなかった。「最近会社のこととかでイライラしてるからさ、俺は無意識なんだけど、お前からそう見えるんだったら他の人にたいしても避けるような態度とってるかもね。教えてくれて有り難う。」などと、思ってもいない、大変下品な対応をとってしまった。本当は、はっきりyesというべきだったのに。自分に対して反吐が出るわ、マジ。

そろそろ終わりにしようと思いますが・・・。結局、彼も悩んでいたので、その隙間につけ込まれてしまったのだ。そういう意味では被害者なのかもしれない。

俺も彼も視覚障害があって、しかも全盲である。全く目が見えないのだ。そんな中でも、俺も彼も、名前を聞けばだれもが知っているような企業で働いている。当然回りは目が見える人間ばかり。健常者には理解できない苦労もあるし、職場の文化そのものに対する不満も当然ある。そういうところも含め、俺も彼もつらい時機があった。結果的には二人ともそのつらい時機は乗り越えられたのだが、彼の場合は、どうも乗り越えるきっかけが「ア」の付くやつだったらしいのだ。

先ほども書いたが、それについて俺はどうこう言う権利はない。だから、俺からそのことについて助言や忠告はしない。本当は今すぐやめろと言いたいが・・・。彼が悩んでいろいろ考えて決断した結果なら、それは尊重すべきだよね、やっぱり。でも、そこで救ってやるのが本当の友達では?という意見もあるだろう。でもそれって驕り(おごり)じゃないのか。人生の先輩ならともかく、似たような経験しか積んでない俺が忠告できる立場にはないよね。

あぁ、酔っぱらっていい気分になりかけたけど、何かのきっかけで思い出して、ついここに書き始めてしまったら、酔いが覚めた。寝る。おやすみ。