「視覚障害の彼女が教えてくれたこと」


ずっと連絡が取れなくて心配していた知人が亡くなったと連絡がありました。一昨日のことです。その人は俺がやってるサークルのメンバーで、その活動に一生懸命な人でした。頼んだことはきちんとやってくれたし、俺よりしっかり仕事してくれたし。有望な人でした。




ただ、その人は視覚障害以外にも障害があって車いすで生活していたので、俺みたいにあちこち出かけて遊ぶ、ということはそんなにたくさんはなかったようです。だからこそ、EメールやSkypeなど、パソコンを使って活動できるサークルに熱心だったのでしょう。このサークルは彼女の生き甲斐だったと、その人のお父さんから伺いました。




正直、亡くなったという知らせのメールを見た時、俺は呆然とするしかありませんでした。入院してると聞いていたけど、回復に向かっていると2週間ほど前に言われていたので安心しきっていたためなおさらでした。生き甲斐を見つけて、今年学校を卒業して、これからって時だったのに。何故、彼女が…。




つい2ヶ月ほど前です、彼女が東京に出てきて一緒に研修をやったのは。彼女にも研修の講師をお願いしてみんなの前で講義をしてもらいました。なかなか東京には出てこられないので、しきりに「秋葉原行きたい」と言っていたのを聞いて、予定変更して秋葉原にも行きました。そうしたら彼女は本当に喜んでくれたそうです。というのも、俺はその時北海道から友達が来ていたので秋葉原にはついて行かなかったんです。「来年は大阪で研修やって、みんなで日本橋に行きましょう」って約束したから、ぜったいそうしようと思ってたのに。来年の夏、また会えるはずだったから、あの時俺は秋葉原に行かなかった。悔やんでも悔やみ切れません。




友達と一緒にいる時や勉強しているときは平気なのに、何もしないでいると彼女のことが頭をよぎってしまう。もし神様がこの世に存在するとしたら、やつは人間を救うためだけに存在してるんじゃないと思う。神が良き心を持つ人間を救うためにあるなら、彼女は今生きているはずだ。そりゃ、小さな悪事はあったかもしれない、でもそれは誰だってやること。心が純粋かどうかは別問題だと思う。そう、彼女は一生懸命だった。同じ視覚障害を持つ人がパソコンのことで困っていたら、その人を援助する。それが彼女の見つけた生き甲斐で、それは清らかな精神に基づいて行われていたに違いない。なのに、彼女は…。神がいるなら、何故救ってくれなかったんだ、何故彼女を…。




そういえば、過去にも俺の身近な人が亡くなっている。一人は俺が中学1年の時小学校5年だったK君。脳性の病気だったらしく、小1までは普通に会話できてたのに、小2のころから病気が進行し始めて、そのころから車いす生活、会話にもだんだん支障が出るようになってきた。そんな状態ながらも元気に学校へ来ていたんだけど。突然のことだったから驚いた記憶がある。
もう一人は同級生のAさん。小学校4年までは同じクラスだった。小3ぐらいまでは普通に話ができていたけど、同じく脳性の病気だったみたいで会話も難しくなり、車いすに乗って生活していた。小5の時からはクラスが別れてしまったからほとんど交流は無くなったけれど、それでも同級生として名前はしっかり俺の中に刻まれていた。小学校の時も中学校のときも、結局修学旅行には一緒に行けなかったけれど。彼女は俺が大学1年の4月に亡くなった。高校卒業して間もない時で、動揺した覚えがある。




いずれの場合も、驚いたり少し動揺したりはしたけど、今ほどつらい気分になることはなかった。せめてお見舞いに行ってあげられたらよかったと思う。死去の連絡を受けたのは一昨日でも、実際に亡くなったのはそれより前だったみたいで、もう葬儀も終わった後だったようだから、ご焼香すらできなかった。何でもっと心配してあげなかったんだろう、どうしてもっと彼女と接してあげられなかったんだろう。心残りなことでいっぱいです。




そして、自分がなんて無力な存在で、無粋で、いい加減な人間なんだと思う。彼女がいなくなって悲しいはずなのに、前から約束してた食事にも普通に行けたし、今日だって大学の友達と渋谷に行ってきた。それは悪いことじゃないし、むしろ断る方がまずいとは思う。でも、こんな時に遊びに出かけるってすごく罪悪感を感じる。そうでもしないと気が紛れないんだけどね。こんなんでいいのかなって考えちゃう。




しかし、少なくとも、いつまでもこんなんじゃいけないと思う。ここにはいない彼女のために俺ができること、それは、彼女が生き甲斐と感じてくれたサークルで、俺も彼女の生き甲斐を引き継ぐことだ。同胞のためにパソコンサポートをやって、サークルのためにシステム構築して、彼女の果たそうとしていたことを、俺たちで果たしてあげなきゃいけない。そう思う。
だから、これからもパソコンサポートを頑張ろうと思う。彼女と一緒に。